ラハブは、平和のために生きるようにはできていなかった。
彼女の身体は、古びた詩のように戦争を記憶している。
ひとつひとつの傷が歌の一節、失った名前たちはそのメロディ。
かつて、彼女は地下のパンク集団の中心人物だった。
しかし信じていたものは裏切られ、祈りは刃へと変わった。
「The Gray Pledge」は、そんな彼女の深淵を描いた楽曲である。
聖なる誓いは、やがて“聖絶”という破壊の儀式へと変貌する。
ラハブは敵地に潜入し、自らの信仰を復讐の名のもとに振るう。
それは戦争というより、もはや祈りの焼却だった。
だが——彼女の中にはもう一つの声があった。モカ。
モカは良心ではない。
もっと深い、もっと親密な存在。
彼女の“影”。かつての無垢さ、喪失の果てに埋もれたもう一人のラハブ。
モカはラハブの怒りを否定しない。
代わりに、別の道をそっと示す。
「死者は復讐を望んでいない。彼らは再生をささやいている。あなたに、生きていてほしいと。」
この内なる対話は、外の戦場よりも過酷だった。
一方で剣を振るうラハブ、もう一方で瓦礫に花を植えるモカ。
モカの語るメッセージは静かで、けれど革命的だ。
この痛みで構成された世界において、“創造する”という行為こそ最大の裏切り。
そしてラハブは、一瞬ためらう。
殺す前に。壊す前に。
それは弱さではなく、恩寵だった。
——もしかしたら、生きることこそが最大の抵抗かもしれない。
——もしかしたら、それが彼女に託された本当の使命かもしれない。
「The Gray Pledge」は、結末ではない。
始まりでも終わりでもない。
それはただ、一つの「岐路」。
影と光のはざま、怒りと再生のあいだに揺れる一人の魂の記録。
彼女が最終的にどちらを選ぶか?
それは次の楽曲へと続く——
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